2005年3月10日

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「大病院 手術名医の嘘」

大病院「手術名医」の嘘
近藤 誠

講談社 2004-04
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久々に近藤誠先生の本を読みました。十数年前に「患者よ、がんと闘うな」という本を著して注目された慶応大学の先生です。

この本は10年前に「ガンは切ればなおるのか」というタイトルで出版されたものの改題、改稿モノです。実は10年前に旧著も読みました。ちょうど、私の母がガンで亡くなって数年後のことで、これを読んで目から鱗が十枚くらい落ちた気になったことを思い出します。ちょうど逸見政孝さんが亡くなったばかりで、その逸見さんの手術について、それから山川千秋さんの手術についても、どういうことだったのかが詳しく書かれています。

改稿に当たって、実際に手術を受けるとお腹の中ではどんなことが起こっていて、どういう後遺症や合併症が起こり得るのか、手術を受けるというのはどういうことか、ということに重きがおかれているようです。私の母が最初に手術を受けた頃(25年ほど前)、私にはこういう想像力が完全に欠けていて、母の気持ち(絶対に手術を受けたいと思っていなかった)を思いやってあげられなかったことを悔やむばかりです。まぁ、母のことを書き出すととんでもないことになりますので、機会があったら別に書くことにします。私自身一度だけ開腹したことがありますが(帝王切開)お腹を開けるというのがどれほど恐いことか、この本を読むとよくわかります。

近藤先生の「ガンもどき理論」は、その名付けからして内外からずいぶん叩かれましたが、内容は10年経っても古くなるどころか、さらに説得力を増しているような気がします。反対する内容の本も何冊か読んできましたが、とても科学的とは言えないものが多く、現状を情緒的に擁護しているようなものばかりだったと記憶します(結局は読んだ人が自分で判断するしかないわけですが)。

    ちなみに、「ガンもどき理論」とは…。
  • ガンには命を奪うガン(転移するガン、本物のガン)とそうでないガン(転移しないガン。ガンもどき)がある。
  • ガンもどきは転移しないので、症状がなければ放っておいても大事にならない。
  • 本物のガンは、早期発見したとしても、その時には既に転移しているので、手術してもムダ。
  • というものです。

こう書いてしまうと身も蓋もないんですが、決して「ガンになったら諦めろ」と言っているわけではなくて「早期ガンの多くは『ガンもどき』。ガンより手術の方が余程恐い」ということだと思います。

少なくとも、この10年で乳ガンの手術は全摘よりも温存が主流になりつつありますし、胃ガンも全摘出、リンパ節切除があたりまえだったのが、縮小傾向にあるようです。手術以外の選択肢もずいぶん増えました。何より、ガンを本人に告知することがタブー視されなくなったのが一番の変化かもしれません。私の後悔には、母に告知をしなかった(父の強い希望でしたが)というのもあるのです。本人は絶対にわかっていたのに、言わない…。こんなヒドイ話はありません。とにかく、そういった変化には、近藤先生が書かれた数々の本の影響が少なからずあったと思います。

ただ、まだまだ世間の主流は「ガン治療=手術+抗ガン剤」です。ドラマ「87%」を見ても、何の疑いもなく手術して、抗ガン剤治療を受けています。本木雅弘演じる黒木先生は、きちんとしたインフォームドコンセントをしてくれる先生かと思っていたら、抗ガン剤治療の段階になって「私を信じてください」と言いました。これは患者の選択肢を奪う発言ですよね。だいたい、手術前に他の選択肢も、手術を受けた場合の後遺症についても話さないなんてフェアじゃないです。

でも、ガン治療の現場の多くはそんなものだと思うのです。だから、実際に自分や家族がガンと診断された場合に、手術に誘導しようとする外科医とどう対峙するのか、無駄とわかっている抗ガン剤治療をどう断るのか、という問題が絶対に出てきます。

やはり、ヘタに早期発見なんてされないように、健康診断や人間ドックにはなるべく行かない方がいいのかもしれません(^_^;。

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コメント(4)

こういう関係の書物好きです。私帝王切開で二回お腹開けております。(^^;恐いことって、どんなことが書かれてましたか? 内臓の癒着とか、感染症・・・???

私の母もガンで手術を受け、今年の6月で丸
10年になります。母の場合は切って正解だったのでしょうね。

医療ミスとか色んなことがありますよね。親戚の叔父さんは、検査入院して、たぶん医療ミスじゃないかと思うような亡くなりかたをされました。本当に生と死は背中合わせですよね・・・。

Posted-by KAKO :2005年3月11日 19:47

KAKOさん、コメントどうもです(^_^)。

「お腹を開けるのがコワイ」ってのは、もともと内臓って外気に触れたり切られたりすることなんて想定していないわけで、「いじったり傷つけたりしなければそう簡単にガン細胞や細菌などはとりつくことができない腹膜」を切り裂くことで、そこから細菌が進入したり、転移が始まっているガン細胞がいきなり増殖したりするってことです。

あとコワイと思ったのは縫合不全。みんながみんな縫うのが上手なわけではないし、お腹の中をどう縫われているかなんてわかりませんものね。

帝王切開すると、その部分の子宮壁がどうしても弱くなるでしょう? 特に自分の場合、後で考えると必要のない帝王切開をされたように思えて仕方ないのと、母の手術のことを合わせて、「手術に誘導しようとする医師」という表現が実感を伴って迫ってきたんです。

KAKOさんのお母様はお元気になられたようで何よりです。10年も元気でいらっしゃるのなら、少なくとも手術は大きな問題もなく成功したんですね。「切って良かった」とご本人、ご家族が満足なさっているのなら、それで良かったんだと思います。

ただ、私の母も最初の手術から10年元気でしたが、後で考えたらその最初の手術こそ不要だったのでは?、と思っちゃうんです。母の場合、「ガンの恐れのある胃潰瘍」と言われて胃を2/3とリンパ節を切除しました。生検の結果、「微小なガン」が見つかったそうで。今だったらそんな乱暴な手術はきっとしないと思います。
母はすごく我慢強い人でしたから弱音は吐きませんでしたが、後で考えると手術後の生活はかなりつらかったようです。すっかり痩せてしまったし。

何より、再発したとき自覚症状があったのに、ギリギリまで誰にも言わなかったのがそれを物語っていると思います。再発で入院したときに初めて言ってましたもん。「手術の後にお腹の中で内臓が動く痛さったらないのよ」って。たぶん、「言ったらまた手術になる」と思って黙っていたんでしょうね。

興味があったらぜひ読んでみてください。図書館にもあるんじゃないかな?

Posted-by かれん :2005年3月12日 09:01

私の帝王切開も、担当医師の「手術好き?」
に当たってしまったと思っております。「私の手にかかれば、帝王切開5回までなら大丈夫だ」と豪語していらっしゃいました。(^^; 縫合等も自信があるとのことでした。確かに傷口はそれ程「あ~あ」ってものではありませんでしたが、
できることなら、自然に陣痛が来るのを待って
みたかったな・・って出産から6年以上たっても
たまにふと考えてしまいます。(^^;

かれんさんのお母様、術後10年後に再発だったんですか? 私の母も、実際はどうなんだろうか・・・とても我慢強い人だし、術後の検診みたいのも適当に終ってしまったようだし、ここ最近は検査とか受けていないだろうし・・・・。
前に同居する兄に「定期検診とか行ってないみたいだけど、行くように言ってくれる?」と
話したら「もう(行かなくても)いいんじゃない。(十分生きたでしょう)」と言われて、とてもショックでした。

今度読んでみようと思います。

Posted-by KAKO :2005年3月12日 19:34

KAKOさんの帝王切開もそうでしたか!
実際、帝王切開好きな先生って絶対いると思いますよ。私は子宮筋腫持ちなんですが、それを発見した直後から、「これがあるからたぶん帝王切開だねー」と嬉しそうに言ってましたもん。(実際にはその筋腫があっても5年後普通分娩できたのに。)

KAKOさんのお母様、ご心配でしょうが、お母様が元気で何の自覚症状もないのなら、わざわざ病気を「見つける」ことはないと思いますよ。「普通に元気」な状況が一日でも長く続く方が、本人も周りも幸せだと思いますもん。
「病気かもしれない」なんて考えると、それがストレスになるので、余計な心配はしない方がいいと思いますよ(^_^)。

Posted-by かれん :2005年3月13日 08:58

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